「肩こり」について

肩の痛み

1.肩こりについて考える

慢性的な首の痛み・肩こり・肩の痛みに困らされていらっしゃる方は多いのではないでしょうか?
整形外科の診療を行っていると、肩こりに悩まされている患者さんは非常に多いのが現状です。
今回は頑固な肩こりに対する治療法についてお話ししたいと思います。

肩こりは、2019年の国民生活基礎調査の概況によると、有訴者率において男性では第2位、女性では第1位となっています。
とても困っている方が多い症状であることがわかります。

厚生労働省ホームページ 2019年 国民生活基礎調査の概況 より引用

2.痛みの原因

痛みの原因としては、首の神経・関節・椎間板・筋肉からくるものまでさまざまな原因があります。

いわゆる猫背といわれるような、あまり姿勢がよくない姿勢でいると筋肉が緊張し続け、痛みを発するようになります。
筋肉から痛みがくることも多く、日常生活動作の改善やリハビリ治療、内服治療・外用剤治療(湿布など)が最初に選択される治療です。

首〜肩周辺の痛みで注意すべき病気としては、頚椎症性神経根症などの神経由来の痛み、あるいは頚椎の腫瘍・感染性疾患などの除外診断も必要です。
従来のレントゲン検査に加えて、MRI検査は骨髄内の病期、神経の状態がよくわかるため、神経症状のサインがある方や、安静時にも痛みがある方、痛みが数ヶ月にわたり長引いている方にはおすすめさせていただいている検査です。

2−1.神経由来の痛み

首を後ろに反らしたり、痛みがある方向に傾けると痛みが出てしまうといった症状が出ることがあります。

頚椎症性神経根症や頚椎椎間板ヘルニアの方にこのような症状がでやすいです。

神経由来の痛みには、神経障害性疼痛治療薬(内服のおくすり)や頚椎カラー固定、リハビリ治療が有効であることがあります。症状が取り切れない方には神経ブロックという注射治療をおすすめしています。

2−2.筋肉などからくる痛み

肩こり

首の骨や椎間板(クッション)、神経から発生する痛みでない場合に考えられます。

頚椎や肩甲骨の周りには何重にも筋肉が重なって走っています。

肩こりの代表的な痛みの原因として、肩甲挙筋(頚椎と肩甲骨をつなぐ筋肉)の周囲の筋肉の動き、あるいは細かな神経の動きが悪くなることによって痛みが出ることがあります。

3.いわゆる「肩こり」に対する治療

内服治療やリハビリ治療、日常生活での作業姿勢の改善(特に頭上の作業をする・長時間あごを前に出すような形でパソコンやモニタ作業・勉強などの首に負担がかかる作業姿勢の改善)で症状が改善されることも多いですが、なかなか治らない方がいらっしゃるのも事実です。

3−1.保存治療と手術治療

整形外科の病気に対する治療は、大きく分けて保存治療と手術治療に大別されます。

保存治療とは、リハビリや服薬治療、ブロック治療などのことです。
手術治療とは、メスを使った手術を行う治療です。

頚椎の構造物や神経自体に異常がなく、肩こりの症状で手術治療が行われることは極めて少数です。

整形外科の疾患では、手術治療が必要な状態ではないけれども、内服治療・リハビリ治療による保存治療があまり効果的でなく、手術治療と保存治療のはざまで痛みに苦しんでいらっしゃる方も多いと思います。

そのような、今までの保存治療を行ったうえで、痛みに困らされている方にはハイドロリリース治療をおすすめしています。

3−2.ハイドロリリース

ハイドロリリース治療とは、超音波装置を用いて、筋膜と筋膜の間に生理食塩水などを注射することによって、痛みをとる治療法です。

超音波機器の解像度が進歩したことで、可能になってきた治療です。現時点では、疼痛緩和の機序は完全に解明されたわけではありませんが、筋膜自体の動きがよくなること、筋膜間に走っている細かな神経の動きが改善されることが要因ではないかと報告されています。

3−3.1回の注射で治るのか?

1回の注射で症状が緩和され、そのまま再発もなく治癒する方もいらっしゃいますが、多くの方は何回かハイドロリリースが必要になることが多いです。
長年の不良姿勢による影響も大きいので、先述の作業姿勢の改善、リハビリ、内服治療と多角的な治療が必要です。
ハイドロリリースが数日間効果があれば、何度か繰り返し注射を行うことで症状の改善が得られる方が多いです。

逆に、短期間の効果も得られない方は、痛みの原因が違う場所にあると考えられます。

4.まとめ

肩こりは、生活はできるけれども重だるくて困ってしまうという方が多く、治療介入をどこまで行うか、患者さんのニーズによるところも大きいと思います。

問題はないと言われつつも、長期間肩こりに悩まされていてなかばあきらめかけてしまっている方には、内服治療・リハビリ治療・ハイドロリリース治療など有効な治療方法を見つけられればと思いながら診療を行っています。お困りの方は当院までお気軽にご相談ください。