神経障害性疼痛

日々の診療の中で、頚椎や腰椎など背骨の病気が原因で、手足に痛みやしびれで苦しんでいる方に対する診療の機会が増えてきていると感じています。

今日はいわゆる「坐骨神経痛」など、神経が原因で痛みを感じる「神経障害性疼痛」に関してお話ししたいと思います。

神経障害性疼痛

神経障害性疼痛とは、末梢神経や中枢神経細胞などの病変や疾患によって引き起こされるものとされています。

神経障害性疼痛の原因は多岐にわたります。代表的な疾患としては、糖尿病や帯状疱疹などが挙げられます。

一般的に人口の約10%程度が罹患していると言われています。

今後、世界的な高齢化に伴い、糖尿病の罹患率の増加なども含めて、神経障害性疼痛の罹患率は増加していくものと考えられています。

神経障害性疼痛は、痛みの程度も強いことが多く、また罹病期間(病気にかかっている期間)が長いため、生活の質を落としてしまうことが著しいと言われています。

近年、神経障害性疼痛の病態の解明が進んでおり、新しい診断方法や治療方法の開発が進歩して生きています。

整形外科領域の中でも、脊椎疾患に関連する痛みの約80%が神経障害性疼痛の要因を含んでいることが多いと言われています。

代表的な病気としては、頚椎症性神経根症や頚椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアがあります。

神経障害性疼痛に対する治療

神経障害性疼痛に対する基本的な治療は、薬物療法です。

国内では、日本ペインクリニック学会から、神経障害性疼痛ガイドラインが2011年に発行され、2016年に改訂第2版が発行されました。

神経障害性疼痛 薬物療法アルゴリズム

神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン 改訂第2版

このような治療薬剤の中で、効果や副作用の有無を確認しながら薬剤選択・用量の調整を行っていくのが基本的な治療となります。

ミロガバリン

従来神経障害性疼痛治療において、ガイドラインに準じてプレガバリンが選択されることが多いですが、眠気やふらつきといった副作用が出ることがあり、患者さんによっては使用できないことがありました。

ミロガバリンは、プレガバリンと同様の作用機序で鎮痛作用を発揮しますが、より鎮痛効果が強く副作用が少ない治療薬と期待されています。

このミロガバリンについては、糖尿病性末梢神経障害性疼痛や帯状疱疹後神経痛の患者さんに対する鎮痛に関する有効性が示されていましたが、腰部脊柱管狭窄症などの腰椎に原因がある神経痛に対する効果は評価されていませんでした。

2021年に発表された研究で、腰椎疾患により腰痛や足の痛みを生じている患者さんを対象にしたミロがバリンの効果について報告されました。

腰痛や足の神経痛の改善に加え、睡眠の質、生活の質が改善されたと報告されました。

(Kim, Isu et al.”Therapeutic effect of mirogabalin on peripheral neuropathic pain due to lumbar spine disease” Asian Spine Journal 2021 15)

腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなど、腰椎疾患による神経痛に悩まされる患者様はとても多く、今回のミロガバリンが腰椎疾患による神経痛に有効であったと証明されたことは、治療を行う上でとても大きな意味のある内容だと思います。

神経障害性疼痛に対する治療薬は、さまざまな種類があります。

用量を増やすことにより効果があがるお薬も多く、副作用がないことを確認しながら徐々に量を増やしていくことが重要であると考えています。また、内服を開始してもすぐに効果はあらわれず数日間〜1週間程度、内服し続けてはじめて痛みが落ち着いてくる方も多いです。

そのため、薬を飲み始めて効果が出ないからすぐに中止してしまうのではなく、副作用が出ないことを確認しながら少し時間をかけて治療を続けることも大事だと思います。

今日は、神経からくる痛み、神経障害性疼痛に関してお話しさせていただきました。

お困りの方はお気軽にご相談下さい。