腰が痛くて仕事や日常生活動作に支障がある、痛みで夜に目が覚めてしまう、朝起きると痛みですぐに動けないなど、慢性的な腰の痛みに悩まれている方も多いと思います。腰痛の原因はさまざまです。

筋膜から痛みがくるもの、椎間関節か椎間板から痛みがくるもの、神経由来の痛みなど正確な診断が難しいと言われています。

井出整形外科クリニックでは、身体所見、レントゲン、超音波機器(エコー)、必要に応じて連携機関でMRIやCT撮影を行い、痛みの原因を正確に診断するように努めています。リハビリと、普段の生活や薬の服用に関するアドバイスで、腰の症状改善に繋げます。

痛みが強い方には、エコーを用いてブロック注射(ハイドロリリースや神経ブロックなど)も行っています。

腰に痛みが現れる代表的な病気の症状、原因・病態、治療方法などを紹介します。
「腰が痛い」「思い当たる症状がある」という方は、お気軽に当院にご相談ください。
病気やけがからの回復、そして発症予防に努め、健康で快適な生活のお手伝いをいたします。

1.腰部脊柱管狭窄症

症状

ご高齢の方に多い病気で、腰の痛みや足のしびれや痛みなどの神経の症状があります。
歩く、台所仕事などの立ち続ける動作で症状が強くなる特徴があります。
腰を曲げると症状が緩和し、座って休むと症状が改善しまた歩くことができるようになるというのも特徴です。
足の力の入りづらさや、排尿や排便などの調整がうまくいかないといった症状が出ることもあります。

原因・病態

日本全体では600万人の方が悩まされている病気といわれています。
腰椎には脊柱管という神経が通るトンネルがあります。
椎間板の加齢変性や、黄色靭帯(おうしょくじんたい)とよばれる靱帯が加齢によって厚くなることで神経を圧迫します。
神経が圧迫された結果、足のしびれや痛みなどさまざまな症状を引き起こされます。

治療

内服治療が必要になります。一般的な消炎鎮痛剤に加え、神経からくる痛みに特化した神経障害性疼痛治療薬、神経の血流を改善するプロスタンジン製剤、漢方薬などがあります。症状に応じてリハビリ治療も併用します。

症状がとりきれない場合には、神経ブロック注射も行っています。

内服治療やリハビリ、ブロック注射などで痛みがとりきれない方や、運動麻痺や排便・排尿障害が出てしまっている方は手術治療が必要になることがあります。

そのような場合には、連携機関である高次医療機関にご紹介させていただきます。

2.腰椎椎間板ヘルニア

 症状

腰痛や足の痛み・しびれ(坐骨神経痛)が出ます。
進行すると足の力の入りづらさや、排尿・排便の調整がうまくいかなくなることがあります。(膀胱直腸障害)

 病態・原因

椎間板は腰の骨と骨の間にあるクッションの役割をはたしています。
加齢による椎間板の変性や、日常生活動作によって椎間板の中の髄核(ずいかく)が飛び出し神経を圧迫することで、足の痛みやしびれが出ます。

腰痛 腰椎椎間板ヘルニア

 治療

腰を曲げる、捻っる動作を控えることが必要です。
神経からくる痛み(神経障害性疼痛)に対しては、消炎鎮痛剤や神経障害性疼痛治療薬の服薬を行います
腰部の牽引などのリハビリも併用します。
痛みが続く場合には、局所麻酔薬やステロイド薬を使用した神経ブロック注射で治療を行います。

内服治療やリハビリ、ブロック注射などで痛みがとりきれない方や、運動麻痺や排便・排尿障害が出てしまっている方は手術治療が必要になります。
そのような場合には、連携機関である高次医療機関にご紹介させていただきます。

3.椎体骨折

 症状

ご高齢の方で特に女性に多い骨折です。
物を持ち上げた、かがんだだけでも骨折を起こしてしまいます。「いつのまにか骨折」とも呼ばれています。
急に腰や背中に痛みがでます。

 原因・病態

ご年齢とともに、骨の代謝が変化することにより骨が弱くなります。特に女性ではホルモンバランスの変化によって起こります。
ちょっとした動作で骨折を引き起こすことから、脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折ともよばれます。

椎体骨折

手足の骨折と違い、外からでは腫れもわからず痛みもそれほど強くないことも多く、ぎっくり腰と間違われることがあります。

 治療

骨折をおこしたばかりの状態では、まず骨折してしまった部分をくっつける(癒合)ための治療を行います。
オーダーメイドのコルセットを装着して腰の安静をはかりつつ、痛みに対する服薬をはじめます。

骨がくっつかず偽関節となり、徐々に骨折した部分がずれてしまい、神経を圧迫して足の痛み(神経痛)が出たり、足の動きが悪くなったり(運動麻痺)することがあります。
そのような場合には手術治療が必要になることがあります。

骨粗鬆症を未然に発見し、骨折を予防する

骨折を早期に発見し、治療をいち早く開始する

ことが非常に重要です。

手術治療が必要になってしまった方は、連携機関である高次医療機関にご紹介をさせていただきます。

また、骨粗鬆症が土台にあることがほとんどですので、骨粗鬆症の治療も同時におこないます。
骨粗鬆症の程度を確認するために、骨密度検査、血液検査をおこないます。
内服薬や注射薬などさまざまな治療薬があるので、状態・ご希望にあわせて適切なおくすりを選択します。

4.腰椎分離症

症状

初期の段階では、腰を反らしたときに狭い範囲に限られた腰痛を感じます。
スポーツ中やスポーツ直後に痛みが強くなります。
進行すると腰痛に加え足の痛みが起こります。
長時間座る・立ち続ける動作で痛みが出ることもあり、進行すると足の痛みやしびれが出ることがあります。

原因・病態

腰の骨の中で、椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部分が分離した状態です。
多くは成長期の疲労骨折が原因と考えられています。
成長期のスポーツ選手に多発します。
日本の成人の内、約6%に発症すると言われています。

腰椎の後方部分には椎弓という部分があります。
腰をそらす動作、ジャンプからの着地のような動作で椎弓に力がかかります。
動作の繰り返しにより、疲労骨折が起こります。

腰椎分離症

疲労骨折を放置してしまうと、完全に骨が折れてしまい(分離の完成)、骨同士がくっつかなくなっていまいます。(偽関節:ぎかんせつ

偽関節になると不安定な状態となってしまい、自然治癒は難しくなります。
分離した部分に骨のとげ(骨棘:こつきょく)ができ、神経を圧迫してしまったり、不安定となった腰椎が前へずれてしまい(分離すべり症)へと移行してしまうと、神経の圧迫が起こり神経痛が出てしまいます。

発症早期の分離症は、レントゲンでうつらないことが多く、当院では分離症が疑われる場合には連携機関でMRIやCT検査を行い、分離症の早期発見を心がけています。

治療

早期に適切な治療を行うことができれば、完全に骨癒合(骨がくっつく)が期待できます。
病期により、最適な治療方法が変わります。

進行期に応じた治療
初期の分離症
根治が期待できます。骨癒合を目指した治療をおこないます。まずコルセットの装着が必要です。
骨の癒合状況に応じてスポーツ中止が必要です。局所を安静にすることで、骨の自然治癒しやすい環境をつくります。
きちんと治療をおこなうことができれば、保存的な治療で完全な治癒が得られる確率が高まります。
またハムストリング(ふとももの裏側の筋肉)がかたい場合は、骨盤の動きが制限されて腰椎にかかる負担が大きくなってしまいます
ハムストリングの柔軟性を高めるために、ストレッチを行います。

・終末期(偽関節)の分離症
残念ながら、コルセット治療をしても骨の癒合は期待できません。(骨がくっつかない)
痛みに対する対症療法が基本となります。
内服治療やブロック注射を行います。
痛みが続く場合は、根治的な手術が必要になることがあります。

早期のスポーツ復帰を希望される場合や、分離の進行がある場合には手術治療(分離部修復手術)が必要です。
分離すべり症まで進行してしまった場合には、スクリューと椎体間ケージを用いた腰椎後方椎体間固定術を行うことがあります。

井出整形外科クリニックでは早期診断のためレントゲン検査に加え、連携機関でCT やMRI検査を行い、早期診断・治療介入に努めています。

5.仙腸関節障害

仙腸関節

骨盤は、仙骨(尾てい骨の上の骨)を左右の腸骨という骨が挟む形をしており、つなぎ目に当たる部分を「仙腸関節」と呼びます。

仙腸関節は体幹と脚をつなぐ重要な関節です。強靱な靱帯で保護されている関節で、ほとんど動かない関節とされていましたが、数mm 程度の動きがあることが確認されています。

仙腸関節

仙腸関節障害とは

仙腸関節は前述の通り、体幹と脚のつなぎ目として衝撃を吸収する役割があります。緩んでしまったり、固まってしまうなどの障害を起こすことで痛みが生じます。これを「仙腸関節障害」と言います。

過剰な負担によって炎症を起こして痛みを引き起こすこともあります。

原因

仙腸間節障害は脚を前後に開いたり腰を大きく捻るなど、骨盤に左右非対称の力が加わることで発症しやすいと言われています。

女性は出産に際して、産道を広げるとために仙腸関節の周りにある靭帯が緩みます。出産後も靭帯が緩んだままになり、仙腸関節障害を引き起こすことがあります。

ぎっくり腰のような急性腰痛の一部は、仙腸関節の捻挫が原因と考えられています。

仙腸関節の捻じれが解除されないまま続くと慢性腰痛の原因にもなることがあります。

これらの症状は、腰椎椎間板ヘルニアなど背骨の病気と間違えられやすく、なかなか適切な治療がなされないこともあります。

また、背骨と仙腸関節は隣あわせとなっているため、背骨の手術後に続く腰痛が、仙腸関節障害が原因であることもあります。

症状

仙腸関節部分の痛みが最も多くみられます。その他にも腰痛、お尻や鼠径部(足の付け根)、脚にまで痛みが出ることもあります。

坐骨神経痛とまぎらわしいことがあります。

痛みのため長い時間椅子に座れない、仰向けに寝れない、横向きに寝るときも痛いほうを下にして寝れない、という症状が特徴的です。

歩行しはじめに痛みを感じても、歩いている内に楽になる、正坐は問題なくできるという方が多いです。

このような症状は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などの背骨の病気で出る症状と似ているため、適切な治療がなされないこともあります。

検査

身体所見(痛みが誘発される動作の確認)が重要です。

代表的な身体症状としては以下があります。

①痛い部分を人差し指でさせる。(痛みの範囲がはっきりとしている(one finger test))

②そけい部に痛みがある。

③椅子で座った際に痛みが出る。

④仙腸関節を圧迫させることで痛みが誘発されること(Newton テスト変法)

⑤後上腸骨棘(腰の骨が出っぱっている部分)を押すと痛みが出る。

⑥坐骨部を押すと痛みが出る。

そのほかに股関節を開く動作で痛みが誘発されること(パトリックテスト)などがあります。その場合には骨盤を固定し同じ動作を行うことで痛みが改善するか確認します。

画像所見としては、仙腸関節障害はレントゲンやMRIなどの画像検査でははっきりとした異常が見つからないことも多いです。

逆にMRIなどで仙腸関節に異常所見がある場合には、軸性脊椎炎などの膠原病疾患が潜んでいる可能性があるため、採血検査などが必要になります。

治療

まずは安静、痛み止めの服薬、骨盤ベルトやコルセットといった治療が選択されることが多いです。

リハビリとして股関節周囲のストレッチを行ったり、仙腸関節の安定性を高める筋肉のトレーニングを行うこともあります。

また、近年Swing-石黒法という治療方法が注目されています。

本法は症状のある側を下にして側臥位(横向き)となり、おしりの負荷をかけリラックスした状態で、上の股関節(痛くない方)を軽く伸展するの方法です。(石黒 隆.新しい腰痛の診かた・治しかた“Swing-石黒法”〜全身に及ぶ仙腸関節機能障害.日本医事新報社,2021)

これらの治療で改善しない場合には、仙腸関節に局所麻酔剤を注射する仙腸関節ブロックなどを行います。

仙腸関節ブロックは,仙腸関節内注入後仙腸靱帯内注入にわけられます。(関節の中か、靱帯内か)

仙腸関節内注射は、より確実に関節の中に注入するためにはレントゲン透視装置が必要なこと、装置を用いても成功率が20〜50%と決して高くないといわれています。

一方、靱帯内注入は、超音波ガイド下に外来診療で比較的簡単に短時間に行える利点があります。

超音波ガイド下仙腸関節ブロック

仙腸関節ブロックとしては後仙腸靱帯内注入が仙腸関節内注入よりも効果に優れ,仙腸関節障害の治療・診断には第一選択として施行されるべきであると報告されています。(Murakami E et al. Effect of periarticular and intraarticular lidocaine injections for sacroiliac joint pain: prospective comparative study. J Orthop Sci 2007; 12: 274-80.)

また欧州のガイドラインでも仙腸関節障害の診断・治療に対して,仙腸関節内注入を推奨しないとされています。(Vleeming A,et al. European guidelines for the diagnosis and treatment of pelvic girdle pain. Eur Spine J 2008; 17: 794-819.)

これらを踏まえて、仙腸関節障害が疑われる患者さんに対しては、当院ではまず内服治療やリハビリ治療を行い、あまり満足いく効果が得られない方には超音波ガイド下仙腸関節ブロック(後仙腸靱帯内注入)を積極的に行っています。


主にご紹介させて
いただく高次医療機関

聖隷横浜病院
横浜市立大学附属病院市民総合医療センター
横浜市立大学附属病院
横浜市立市民病院
横浜市立みなと赤十字病院
けいゆう病院
横浜中央病院
横浜掖済会病院