変形性膝関節症の早期発見
日本は現在、超高齢化社会を迎えています。
「人生100年時代」と言われるように平均寿命が延びた結果、加齢変性による運動器疾患が問題となる患者様が増えてします。今後もこのような傾向は続くと思われます。
関節痛は腰痛や肩こりに次いで多い主訴となっています。
関節痛の中でも特に多い、膝の痛みについて今回はお話しできればと思います。その中でも近年トピックになっている、「早期変形性膝関節症」「内側半月板逸脱」「内側半月板後根断裂」にフォーカスを当ててお話ししたいと思います。
変形性膝関節症
膝痛の代表的な疾患として、「変形性膝関節症」があります。
変形性膝関節症の原因は関節軟骨の老化によることが多く、肥満や素因(遺伝子)も関与しています。
また骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷後に起こることもあります。
膝だけに限らず、荷重関節(体重がかかる関節)に起こりやすい病態です。その他の関節に起こる部位としては、変形性股関節症が代表的です。
変形性膝関節症が起こる原因
年齢とともに関節軟骨が弾力性がなくなり、また使いすぎによるすり減りが起こり関節が変形します。
膝のクッション機能の役割がある「半月板」が少しずつ痛むことも原因の1つです。
これらが関節の炎症を引き起こし、痛みが出るようになります。
進行すると骨棘と呼ばれる骨の棘ができたり、骨同士がぶつかりあうようになったりします。
早期変形性膝関節症とは
最近では「早期変形性膝関節症」というの病態概念が注目されています。
膝の痛みがあるもののレントゲン検査では異常が見られず、関節軟骨の亀裂・軟骨下骨(関節軟骨の直下にある骨)の変化・半月板の変性や位置の異常が見られる病態が存在することが明らかになってきました。
このような早期変形性膝関節症を放置すると、軟骨を含めた関節の変形が加速し、比較的若い年齢で変形性膝関節症となってしまうことが報告されるようになってきました。
健康寿命
人生100年時代を迎えた現在、寿命が延びた年月をどう過ごしていけるかが注目されています。
寿命が延びても、体の痛みのために活動が制限されてしまうことが大きな問題となってきており、運動器疾患に対するの考え方が変わってきています。
痛みなく、自立して生活できるいわゆる「健康寿命」を伸ばすことが目標になっています。
病気を発症する前に予防する、予防医療の重要性が運動器疾患の中でも重要視されてきています。
早期変形性膝関節症を考える意味
変形性膝関節症を早期の段階で発見・治療することで、進行を予防できる可能性があります。
早期変形性膝関節症の原因
早期変形性膝関節症を引き起こすひとつの原因として、最近のトピックとしては半月板の機能異常があげられます。
中でも近年注目されているのが、内側半月板が関節面から逸脱することで、その後の変形性関節症の発症に関連しているということです。(半月板内側逸脱)
半月板内側逸脱
逸脱の原因としては、半月板後根断裂や放射状断裂があります。
また、断裂がなくとも、半月板周囲の靱帯が機能不全に陥ることにより、半月板機能が正常に機能しなくなり逸脱することも報告されています。
半月板後根断裂
半月板後根断裂とは、半月板の後ろの端が関節包や靱帯・骨に連続する部分が断裂してしまう状態です。
この状態になると、半月板の不安定性を引き起こします。
フープストレスという力に拮抗することができなくなり、半月板が逸脱してしまいます。
その結果、
1.大腿骨と脛骨の関節の接触圧が強くなる
2.膝が不安定になる
3.膝の運動自体が変化する
といった変化が起こり、関節軟骨の変性や関節炎を進行させると言われています。
受傷機転としては、明らかな外傷がなく歩いている最中に「グキッ」「バキッ」と感じ、突然痛みを感じることもあります。発症初期の段階ではレントゲン検査でも異常がわからないことが多く、見過ごされることがあります。しかい、放置すると関節軟骨の変形が進んでしまうため、早期の発見が重要です。
次にこのような早期の状態を発見するポイントをお話ししたいと思います。
早期変形性膝関節症を早く見つけるためには
単純X線を用いた早期膝OA診断のポイントは、立位(体重がかかった状態)で膝のレントゲンを撮ることです。
また強い痛みがある場合や痛みが持続する場合などは、MRI撮影を検討することも重要です。
MRIにより、半月板やその他靱帯の状態を評価することができます。
近年は、立った状態でも超音波検査で半月板の逸脱が確認する方法も報告されています。
半月板逸脱を伴うような半月板後根断裂は、放置すると関節軟骨の摩耗を助長し、変形性膝関節症へと進行してしまう可能性があるため、
内視鏡で半月板の縫合を行い、正常に近い半月板機能に戻すことで変形性膝関節症を予防することが重要であると言われています。
このような理由から、早期発見のためにも膝の痛みについてあまり我慢することなく気軽に近隣の医療機関を通院することをお勧めします。
お困りの際には、お気軽にご相談下さい。