骨粗鬆症の薬物治療

骨粗鬆症の概要

① 骨密度と骨質が骨の強度を決定します。

② 骨密度は、骨吸収の亢進、骨形成の低下、両者のバランスで低下します。

骨粗鬆症治療 骨形成 骨吸収

③ 骨吸収を抑制する薬剤には、大きく分けて、活性型ビタミンD3誘導体、ビスフォスホネート薬、SERM、抗RANKL抗体薬、ロモソズマブの5つがあります。

④ 骨形成を促進する薬剤には、副甲状腺ホルモンがあります。

⑤ 骨吸収抑制・骨形成促進の両方の作用を持つ薬剤として、ロモソズマブがあります。

骨吸収抑制

① 活性化ビタミンD3誘導体

ビタミンDは魚類やきのこ類に多く含まれ、皮膚で紫外線を浴びることでも合成されるビタミンです。

ビタミンDは腎臓で活性型ビタミンD3に変換され、小腸でのカルシウム吸収を促進します。

また、ビタミンDは筋肉量維持や転倒予防に対する効果も注目されています。

② ビスホスフォネート薬

体内に取り込まれたビスホスフォネートは、骨表面のハイドロキシアパタイトにくっつき骨に沈着します。

ビスフォスフォネートが破骨細胞(骨を壊す細胞)に取り込まれることにより破骨細胞が機能しなくなり(アポトーシス)、骨吸収は抑制されます。

近年、BPの長期投与と大腿骨非定型骨折や顎骨壊死の関係が報告されています。骨粗鬆症の治療効果を判定しつつ、他剤への変更や休薬も選択されます。

③ 選択的エストロゲン受容体調整薬(SERM)

閉経後の女性では、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌量が減ることで骨吸収がすすみ、骨粗鬆症が進行します。

SERMは、骨のエストロゲン受容体に選択的に作用することで骨吸収を抑制します。

治療中の注意点として、頻度は非常に稀ですが静脈血栓塞栓症が挙げられます。

④ 抗RANKL抗体薬

破骨細胞への分化過程をブロックすることで、破骨細胞の機能をおさえることで骨吸収を抑制する薬剤です。

6ヶ月に1回の投与で骨粗鬆症の治療を行うことができます

注意点として、血中のカルシウム濃度が低下し手足の震えや痙攣が起こることがあります。

定期的な血液検査が必要です。

骨形成促進

副甲状腺ホルモン

副甲状腺ホルモンを1日1回あるいは1週間に1−2回など間欠的に投与することにより、骨形成が促進され骨密度が上昇します。高い骨折抑制効果も証明されています。

治療中の注意点として、投与可能期間が2年間のみであることが挙げられます。

骨形成促進+骨吸収抑制

ロモソズマブ(イベニティ)

骨をつくる骨形成では、Wntというシグナル伝達を経て骨芽細胞の分化が誘導されることで骨形成が促進されると考えられています。

このWntシグナル伝達を抑制する因子としてスクレロスチンという物質があります。

ロモソズマブは、スクレロスチンに結合し、働きを阻害することで、骨芽細胞の産生を促進し、骨形成の促進作用をあらわします

また同時にロモソズマブにはいくつかのシグナル伝達経路を介して骨を壊す骨吸収を抑制する作用も考えられています。

実際の治療としては、ロモソズマブを月に1回皮下注射で投与し、12ヶ月間継続します。

その後は、その他の骨粗鬆症治療薬へとスイッチすることが一般的です。

注意点としては、比較的新しい(1年以内の)心筋梗塞や狭心症・脳梗塞などの持病をお持ちの方は、それらの病状を悪化させる危険性があるため、投与は控えます。

また、血性カルシウム濃度が下がる可能性があるため、定期的な採血検査が必要です。

低カルシウム血症を予防するために、ビタミンD製剤の内服治療併用も有効です。

お気軽にご相談ください。

骨粗鬆症治療は進歩しており様々な治療薬があります。

骨密度や血液検査、骨折歴、生活環境に応じて患者様お一人お一人によって最適な治療方法をご提案させていただきます。

そして、適切な治療を行うことで骨密度が改善し、骨粗鬆症を治すことも期待できます。

骨粗鬆症治療に関して気になる点がある方は、是非お気軽に院までご相談ください。


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