サイレントマニピュレーションとは

肩関節周囲炎(いわゆる四十肩・五十肩)で肩の痛みが長引いてしまっている患者様に有効な治療法です。

肩関節周囲炎は長期化すると、肩を包んでいる「関節包」という組織が炎症を起こして分厚くなったり、縮んで硬くなってしまいます。

この硬くなった関節包が肩の動きを妨げる根本的な原因です。

硬くなった関節包を、麻酔で痛みを感じない状態にした上で、ゆっくりと動かし、関節包を引き伸ばして剥がす治療法です。

【診察

  • 現在の肩の状態を詳しく診察し、この治療が適しているかを判断します。

【麻酔(斜角筋ブロック)】

  • エコー(超音波)装置を使って神経の位置を正確に確認しながら、首の横(斜角筋という筋肉の間)に局所麻酔薬を注射します。
  • これは腕の神経の束(腕神経叢)を麻酔する方法の一種で、肩から指先までの感覚がなくなり、腕の力も抜けてリラックスした状態になります。
  • 意識ははっきりした状態で、医師や看護師と会話することもできますのでご安心ください。

【施術】

  • 麻酔が十分に効いていることを確認し、医師が患者さんの腕を持ち、ゆっくりと様々な方向に動かしていきます。
  • 硬くなった関節包が「ミシミシ」と剥がれていくような感触がありますが、麻酔が効いているため痛みはありません。
  • 施術時間は10分~20分程度です。

【リハビリテーション】

  • 肩の硬さがとれた状態を放置すると、すぐに関節包が癒着を起こし肩の硬さが再発してしまいます。
    そのため、2週間程度は週2回以上、理学療法士が行う運動器リハビリが必要になります。
  • 痛くない: エコーガイド下の的確な麻酔で、施術中の痛みはありません。
  • 効果が早い: 施術直後から、自分では動かせなかった範囲まで腕が上がるようになります。
  • 体が楽: メスを使わないため、体への負担が少なく、多くの場合、日帰りや短期入院で治療が可能です。
  • 意識がある: 施術中に意識があるため、何かあればすぐにスタッフに伝えることができ、安心して治療を受けられます。

この治療は、固まった関節を動くようにする「きっかけ」を作るものです。

治療の効果を確実なものにし、再発を防ぐためには、患者さんご自身の術後のリハビリが不可欠です。

  • なぜリハビリが重要?
    • 施術で広がった関節包は、動かさないと数日でまた硬く縮んでしまいます。これを「再拘縮(さいこうしゅく)」と言います。
  • 何をするの?
    • 理学療法士の指導のもと、正しい肩の動かし方を学び、ご自宅でも継続していただきます。
  • 痛みについて
    • 麻酔が切れた後(通常数時間~半日後)、数日間は筋肉痛のような痛みや、これまでとは違う種類の痛みが出ることがあります。
    • 処方された痛み止めを上手に使い、痛みを我慢せずにリハビリを続けることが成功の鍵です。
  • Q. 副作用やリスクはありますか?
    • 非常に稀ですが、骨折、神経や血管の損傷などが起こる可能性がゼロではありません。
    • また、麻酔の影響で一時的に声がかすれたり、息苦しさを感じたりすることがありますが、通常は麻酔が切れれば元に戻ります。エコーで常に確認しながら、安全には細心の注意を払って行います。
  • Q. 1回で完全に治りますか?
    • 施術によって可動域は大きく改善しますが、その状態を維持し、さらに筋力を回復させるには、数ヶ月間のリハビリが必要です。「治療のゴール」は、リハビリが終了した時点と考えてください。かたさが残る、再発する場合には何度か施術が必要になる場合もあります。
    • サイレントマニュプレーションで必ず痛み、拘縮がとれるわけではありません。何度か必要にある場合、症状が取りきれない場合には、全身麻酔下に関節鏡を用いた鏡視下授動術(手術)が必要になることがあります。

最後に

サイレント・マニピュレーションは、長引く五十肩の痛みと不自由さから抜け出すための非常に有効な治療法です。

これは医療の力だけではなく、患者さんご自身の「治したい」という強い意志と、リハビリへの積極的な取り組みがあって初めて大きな効果が生まれます。

ご不明な点や不安なことがありましたら、いつでも医師やスタッフにご相談ください。一緒に頑張って、快適な毎日を取り戻しましょう。

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